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下河辺:いや、それができたのも、やはり橋本先生が競馬というものをよくご存じで、競馬のことを真剣に考えていただいているからだと思います。
 議連の働きかけで最初に改正していただいたのは、所有馬が1頭でも条件が整えば事業所得とすることが可能となったということで、平成15年でしたが、これは馬主としてはたいへんありがたいことでした。その次が16年の、中央競馬と地方競馬の相互発売ですね。このところ中央も地方も売り上げが改善されていますが、それにはこの相互発売が大きかったと思います。

橋本:そうですね。

下河辺:中央の馬券を地方のファンの方が買ってくださる、逆に地方の馬券を中央のファンが、ということで、日本全体で競馬の認知度が上がりましたね。

橋本:あとはナイター競馬ですね。ナイター競馬を推進することができて、地方競馬がその地方独自のオンリーワンの競馬ができるようになりました。中央と地方がいい意味での住み分けができるようになったのも大きいと思います。
 競馬が難しいのは、どうしても「ギャンブルである。」という側面がついてまわることなのです。競馬が成り立つのは、馬産地あってのことですから、純粋に考えれば、競馬の売り上げの一部が馬産地に還元されるのは当然なのです。ところがご承知のように、競馬の売上げの10%は第1国庫納付金として国に納付されますが、一旦、国に納付されますと、税金と同様に国の収入になるわけですね。そこで、「税金をギャンブルに使っていいのか。」という議論になってしまうんです。

下河辺:なるほど。

橋本:そのあたりのことを理解していただくには、競馬そのものの価値を高くしなければいけないのですが、いまの地方競馬は運営していくのが精一杯で、レベルを上げることまではできないんです。そういう状況の中で、競馬をうまく回していくシステムをどう作っていったらいいかを考えているのですが。
 貴連合会などからご要望がありました今回の「競走馬に係る減価償却開始時期の見直し(前倒し)(*1)」にしても、最初は「そんなことできるわけがない」と言われましたし、「海外競馬の馬券の国内発売(*2)」も何年も前から議論のテーブルには載せていたのですが、各論に入ると話が進まない状況だったんです。橋本聖子さん

下河辺:そうなんですか。

橋本:海外馬券の話が進んだのは、一つにはインターネット発売のシステムが進化したこと、もう一つはtoto(スポーツ振興投票。一般的にサッカーくじと呼ばれている。)の改正ですね。これまではJリーグだけの発売だったのですが、海外リーグも発売できるようになって、馬券についても言いやすくなりました。

下河辺:ああ、なるほど。

橋本:海外では日本の馬券を買えるわけですから、日本も新しい工夫が必要でしょう、と。

下河辺:いまは凱旋門賞をはじめ、ドバイや香港に日本の馬が攻めていっていますからね。こうした海外のレースの馬券を日本国内で買えることになれば、競馬ファンを惹きつける大きな要素になると思います。この改革は、今後の競馬産業にとって、とても大きなものになると思います。
 減価償却開始時期の前倒しも、馬主には、税務上の経費算入時期の改善とそれに伴う資金負担の軽減が図られることから、馬主さんが馬を買う意欲を考えると、その効果はとても大きいですね。よくここまでやっていただけたなと思います。

橋本:減価償却については、数字としては2か月間の前倒しなのですが、「本年4月に創設された『早期特例登録制度』により、1歳9月から2歳2月までの6か月の間、入厩及び馬体検査を要件としないで、育成牧場に在厩のまま競走馬登録が可能となり、登録が終了した月から減価償却を開始することができる。」ということで、馬主さんにはそれが非常に大きいと言っていただいています。本件については、農林水産省やJRA等関係の皆さんにも積極的に取り組んで頂き、感謝しております。後は、これが実際に競馬界や馬産地の活性化につながるかどうかですね。

下河辺:これは間違いなくいい方向にいくと思います。


*1 競走馬所有にあたっての税務処理の改正。競走馬の減価償却の開始時期は、従来、中央競馬においては、トレーニング・センター等に入厩し、競走馬登録が終了した月(最短で1歳11月)からできることになっていた。今回の改正で、償却開始は「早期特例登録」の制度を利用することにより、入厩を伴わなくても競走馬登録が可能となり、最短で1歳9月から開始することが可能(国税庁が本年6月1日付けで了承)となった。

*2 平成27年4月の競馬法改正(全会一致で成立)で、海外で行われるレースの馬券を日本でも発売できるようになった。

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