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森:レースに関する話題についてもお伺いします。昨年秋のマイルチャンピオンシップでは、影響の大きな進路妨害があったのに失格・降着処分が下されませんでした。にもかかわらず、騎乗していた騎手には開催日8日を含む23日間の騎乗停止という厳しい処分が科せられまして、我々の間でも基準がわかりづらいという声も上がりました。平成25年より運用されている降着制度のルールについて、あらためてお聞かせください。

後藤:これに関してはお客様からも、どうして失格・降着にならないのか、以前のルールの方がわかりやすくてよかったのでは、といった声をずいぶんといただきました。現行の降着ルールは、加害馬の違反行為がなければ、被害馬が加害馬に先着することができたかどうかが判断基準となりますが、騎手の違反行為が増加しないよう、海外の主要競馬国と同じように騎手に対する制裁を厳しくすることでラフプレーを抑止することが前提となります。騎手に対する開催日8日を含む23日間の騎乗停止というのも、通常の不注意騎乗の倍以上、海外の主要競馬国と比べてもかなり重いものです。さらに今回は、制裁点数による再教育も実施します。実際、進路の取り方による騎乗停止の件数は、新ルール開始前の平成18年から24年までの7年間の平均が40.6件だったのに対し、平成25年から27年までの3年間では37.7件と少なく推移しています。このことからルール変更後も制裁を強化したことで一定の抑止効果が働いているものと考えます。今回、マイルチャンピオンシップでは大きな制裁に該当する騎乗により、多くのお客様にご迷惑をおかけしてしまいました。我々としては、引き続き厳格にルールを運用していくとともに、このルールの周知を継続していく必要があることも認識しています。後藤 理事長

森:なるほど、よく理解できました。次に、競馬の国際化に関して質問させてください。先ほど話に出た海外競馬の勝馬投票券発売についてですが、我々馬主が馬を海外の競走に出走させる場合、どうしても賞金が全体的に安いことがネックになります。一部の招待レースを除き、少なくない遠征費用もかかります。平成26年に海外への遠征馬に対する補助金・褒賞金制度は撤廃されましたが、今後も何らかの補助などはご検討いただけないのでしょうか。

後藤:競馬を主催する立場から申し上げますと、まず世界のどこの主催者も、いかに自分のところに質の高い人と馬を集めて、お客様に良い競馬を楽しんでいただくかに最大の力を注ぐのが原則です。そうやって売り上げたもののうち、払戻しを除いた分をさまざまな形で関連サークルに還元する、その好循環でもっともっと競馬は盛んになる。そういう考え方です。海外の主催者も、本来なら出走に必要なステークスマネーを免除したり、輸送費を負担したりするなど、自分の競馬にインセンティブを設定し、出走馬を集めています。私たちも、馬が外に出ることを奨励する仕組みを新たに作るのではなく、自分たちの競馬に内外から良い馬が集まることに注力するのが原則だと考えています。例えば、有馬記念はファン投票で出走馬を決定しますが、選ばれても出走しない馬が増えることを避けるため、平成26年からは投票順位による出走時のインセンティブマネーの仕組みを導入しました。ただ、一方で我々としては海外の競馬へのチャレンジ自体は続けていただきたい、それによって日本の人馬の質の高さをアピールしていただきたいとも考えています。

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