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―松本さんは2007年5月に紺綬褒章を、2010年11月には旭日小綬章を受章されています。

松本:紺綬褒章は本業の方で、明石市に貢献したということでいただきました。旭日小綬章の方は「畜産事業振興に対する長年の功労により」ということになっていますが、その畜産と、あとはやはり本業で、世界のクランクシャフトの45%を占めている事業に関する功績、両方あわせての叙勲だと聞きました。

―畜産事業振興というのは、つまり……。

松本:日高の馬産地でこつこつ馬を預け、買ってきたということですね。簡単にいえば、牧場と仲良くして、売れない馬を買い続けてきたということでしょう(笑)。

―授賞式は皇居で行われたのですか。

松本:そうです。皇居には、園遊会でも伺いました。僕はそれまでにも日本馬主協会連合会の会長をやっていたこともあって、陛下には何度かお目にかかったことがあったんです。だからなのか、その園遊会の時にはお声をかけていただきました。

―それはすごい! ご招待された各界の功労者のうち、お話しできるのは一部の方だけですよね。

松本:そうなんです。僕は大相撲の白鵬関のわりと近くにいたんですが、順番が来ると陛下が、今年の桜花賞は荒れましたね、とおっしゃったんです。よくご存知だなと驚いてしまいましたよ。何の年だったのかな、あれは(笑)(※2008年、12番人気のレジネッタが勝利)。

―何と答えられたんですか?

松本:びっくりしましたね、と言ったと思います(笑)。皇室はみなさん馬に関心がおありですけど、それにしてもありがたいことだと思いました。

―そんな松本さんから、これから馬主になる方へアドバイスなどあれば伺いたいのですが。

松本:無理をなさらないことが大事だと思います。余裕を持って、長い間楽しんでほしいですね。そのためには、先程もお話が出ましたが、牝馬に目を向けて、その子供を楽しむということをやられるといいと思いますね。若い馬主さんには特におすすめしたいです。牝馬を購入すると牧場も喜びますし、そこから長いお付き合いができますから。

松本 好雄オーナー 下河辺 俊行 会長

―そうやって馬産地へもご自身で足を運んでいただきたいですよね。

松本:最初から一人ではなかなか行けないでしょうから、調教師さんとでもいいですし、協会に入って知り合った他の馬主さんといっしょに、というのもいいと思います。どんな仕事をしている方でも、競走馬の生産者のような方と付き合う機会はそうありません。せっかく馬を持つことになったのだから、馬産地へ行って、そういう方たちと繋がってみるといいんじゃないかと思います。

―今後、馬主はどんな存在になっていくべきでしょうか。

松本:僕は、社会における馬主のステータスをもっと上げなければと思っているんです。そういう意味で社会福祉に貢献する活動などは大事で、今も各馬主協会から寄付などは行われています。でも、例えばですが1勝したら幾らというように、もっと馬主個人が直接、そういうものと関わる仕組みも必要ではと思っています。そうすれば反響も違うでしょうし、馬主側の意識も高まりますから。これからは馬主も競馬サークルの中だけでなく、社会のいろいろな場所へ参加していくことが必要になってくると思いますね。

左:松本JOA名誉会長 右:下河辺JOA広報委員長

左:松本JOA名誉会長
右:下河辺JOA広報委員長

インタビュー後記

馬産地と深く繋がり、日高の牧場に多くの繁殖牝馬を預託されている松本オーナー。そういった血統や馬の話は尽きることはなく、それだけでこのインタビューのスペースが軽々と埋まってしまいそうなほど。今回は馬主協会や連合会の会長などを歴任し、JRAと馬主との間に立ってきた経験からのお話も多く聞かせていただきましたが、いつかまた腰を据えて純粋に馬のお話、競馬のお話をお聞きしたい。そんなふうに思わせてくれる方でした。

聞き手:軍土門隼夫
※このインタビューは平成29年11月に行ったものです、文中の競走馬や繁殖牝馬の成績はインタビュー時のものです。

松本 好雄氏 プロフィール

松本 好雄(まつもと よしお)
1938年1月6日生まれ、兵庫県明石市出身。船舶やエネルギー関連の大型鋳鍛鋼品などを手がける「株式会社きしろ」代表取締役会長。1974年に馬主資格を取得。主な所有馬にメイショウドトウ、メイショウサムソン、メイショウボーラー、メイショウマンボなど。2005年より日本馬主協会連合会会長、現在は名誉会長。JRA運営審議会委員や、中央競馬馬主相互会会長といった要職も務める。

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