―下河辺さんは日本馬主協会連合会の「社会貢献・広報委員長」も務められています。
下河辺:日本ではまだまだ馬主の、もっと言えば競馬自体の社会的地位が低いと思います。親戚に指揮者の小澤征爾さんがいるんですが、昔、フランスダービーを観に行ったときに、ちょうど現地にいた彼を誘ったんです。そうしたら彼が言うんですよ。
「驚いた、パリで会いたいと思っていた人全員に、この日の競馬場で会えたよ」
って。日本も競馬が「社交の中心的な場所」という存在になっていけばいいなと思いますね。
―これから新しく馬主になろうという方に、何か言葉をかけるとしたら?
下河辺:まずは、無理をなさらないでください、と言いたいです。5頭買えると思ったら、最初は1~2頭にしておくとか、ゆっくり入ってください。そうやって楽しんで、勉強していく中で人間関係を、信頼関係を作っていってください。儲けようなどと思わず、楽しむこと、みんなで夢を見ることを大事にしてほしいですね。
―下河辺さんご自身の「夢」はなんでしょうか?
下河辺:そうですね、ダービーを勝ちたいとかいろいろありますけど、でも馬主としてはやっぱり凱旋門賞ですね。あんな華やかで魅力的なレースはないです。あそこで走らせたい、勝ちたいですね。私の場合は馬主としてでもいいですし、生産して買っていただいた馬でそれを叶えることも可能ですから。その場合は、馬主さんと一緒に思い切りその「夢」の瞬間を楽しみたいですね。
インタビュー後記
ロンドンブリッジの話などは、聞き手という以前に、いち競馬ファンとして楽しませていただきました。また、新たに馬主になろうとしている方への「無理をなさらないでください、ゆっくり入ってください」というアドバイスは、生産者としてもさまざまな馬主さんと付き合ってこられた経験から導かれた言葉だけに、聞いていてはっとさせられるものでした。
聞き手:軍土門隼夫
下河辺 俊行氏 プロフィール
下河辺 俊行(しもこうべ としゆき)
1942年6月14日生まれ。1973年に馬主資格を取得(名義は下河辺牧場)。主な所有馬にロンドンブリッジ、グレイスティアラ、シュンドルボン。現在、日本馬主協会連合会 社会貢献・広報委員長、札幌馬主協会 会長、日本競走馬協会 副会長を務める。